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2009年7月29日改訂  
株式会社ボイジャー

TIBF2009 大谷和利氏講演録  2009.7.10 Fri

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テクノロジーライターの大谷和利です。
早速プレゼンテーションを始めていきたいとおもいます。
ここにLIFEという字が出ております。人生ということですね。むかし僕が「地獄の黙示録」という映画を見たときに非常に面白い言葉があったのです。それは何かというと、「人生の中に何かが隠されている。それは、もしもという言葉である」というフレーズでした。まさに人生というのはもしも何があったら、その連続だとおもいます。
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それと同じようにiPhoneというのは、電話であってインターネットデバイスですが、これを見つめていたときにiPhoneというのは「i(アイ)」「hon(本)」、自分の本ではないかとおもいつきました。実際に今日のテーマとしてはそのiPhoneが、「i(アイ)」「hon(本)」になっていくというようなお話をしたいとおもいます。まさに電子書籍のパラダイムシフトということがいえるでしょう。
私はテクノロジーライターが本業ですが、原宿でデザイングッズを扱うセレクトショップ「アシストオン」の経営に参加しています。それから、Macintoshその他マルチOSの開発環境をサポートするプログラマーをサポートしていくNPO団体“MOSA”(Multi OS Software Association)の副会長もしております。今日はまさにボイジャーさんのために電子書籍が今後どうなっていくのかというようなお話をしたいとおもいます。
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ちょうど今日、たまたま僕の新刊『ジョブス流仕事術』の発表というものがありました。
昨年「iPod を作った男」「iPhoneを作った会社」という本がアスキー新書から出まして、これをさっそく萩野さんの方からお話があって電子化したけれど、出せなかったという経緯があります。その点については後ほどお話しします。
今日発売のものは第3の新書ということで『ジョブス流仕事術』といいます。今日はビジネスデーということで業界の方が多いでしょうが、今回の新書はですね、キャッチコピーが「意外と真似できる」になってます。
実は2冊目の本は、編集部の方でつけましたけども、キャッチコピーが「真似したら絶対につぶれる」になっていたんです。「真似したら絶対つぶれる」というのが2冊目だったのに、3冊目になったら「意外と真似できる」と。このあたりは編集部の非常にマーケティング意図が出ているとおもうんですが、順番が逆でなくてよかったかなと。真似できるとおもって買ったら、次で絶対つぶれるといわれたら困ります、順番が逆で助かったいうようなお話です。

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iPhoneは人気になっているということは皆さんもご存知だとおもいますけれど、「消されたヘッドライン」という映画を見ているときに自分自身でも映画館の中でiPhoneの普及というのを感じたエピソードがあります。
この映画の中にiPhoneが出てきます。ラッセル・クロウがベテラン記者で、相棒の新米記者がiPhoneを使っている。ベテランの記者は従来の携帯電話を使っている。そういう設定です。ただ、映画の中に出てくる製品というのは実はプロダクトプレイスメント、メーカーがお金を払って製品紹介してもらう一種のプロモーションですね。ですからiPhoneが映画の中にでてきても僕はそんなに驚かなかったんです。けれど、何に驚いたかというと、iPhoneの音、こういう音が急に映画館の中で響いたわけです。僕は、しまった、マナーモードにするのを忘れた!と、あわてて映画館の中で自分のiPhoneを取り出してチェックをしてみたら、ちゃんとマナーモードになっていたんですね。
ただそれは、iPhoneが出てきて鳴っていればわかるんですけども、わざわざ夜中に新米記者の暗いベッドルームの中、ラッセル・クロウが電話をする、と音だけが響くんです。暗い映画館の中で音だけが響くと、あ、しまったと思うわけです。面白いのはそれが僕一人ではなくて、まわりにも何人もいたんですね。みんな取り出してチェックをして、あ、マナーモードになっているじゃないかということで、画面を見たら種がわかってみんなで大笑いになったというのがありました。それもiPhoneが普及しつつあるということの実証かなと、非常に面白い例かなと思います。
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iPhoneはご存知のとおりApple社の製品なんですが、実はApple社というのはここに至るまでもいろいろなブレイクスルー、マイルストーンになるような製品を作ってきました。コンピューターの場合でしたらMacintoshというのがありますが、1984年に出たMacintoshに標準でついてきたMacPaintというお絵描きソフトがあります。これは今見るとモノクロのドット絵なんですけども、当時はこういう絵を描けるコンピューターというのはなかったわけです。それを一般の人が使えるようになったので、いろいろな浮世絵風の絵とか説明図のようなものをMacintoshで作るようになりました。これの作者のビル・アトキンソンという人は、実は美術館で飾ってもおかしくないような作品を作れるソフトが作りたかったと話しています。
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その夢はですね、現代美術みたいな展示会では実現したんですが、やはりファインアートの世界ではまだ追いつかなかったんです。ところが、iPhoneの時代になりますと、つい先頃The New Yorkerというアメリカで有名な週刊誌の表紙が、iPhoneの「ブラッシーズ」というソフトを使って描かれました。いわゆる携帯電話のお絵描きソフトで描いたものが、老舗の由緒ある週刊誌の表紙を飾ったわけですね。この画面はインターネットからダウンロードしたNew Yorkerの表紙をiPhoneの画面に当てはめてみたものです。
実はですね、ここに本当のNew Yorker誌があります。これを見ると、小さい画面で描いているんですけど、これを拡大・縮小しながら絵をかけるもんですから十分な解像度があります。老舗の雑誌の表紙を飾れるような作品が、iPhoneの上で描かれる時代になったということです。これは電子出版ともからんできますけれども、非常に象徴的な出来事だとおもうのです。
iPhoneという、携帯電話だとおもっていたものが、コンピューターに匹敵するようなクオリティをもって絵を描くことができる……ある意味でコミュニケーションツールになってきているということです。

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1984年にMacintoshが出て、MacPaintがあったというお話をしましたが、出版業界とのからみでいいますと、1985年にはデスクトップパブリッシング、DTP革命というのがありました。そのときAldusという会社でPageMakerというDTPソフトを作ったんです。これ以前はいわゆる大型コンピューターとかを使って活字組の代わりに電子的に版組する電算写植というのはありました。けれども、自分の机の上で、簡単な機械と簡単なソフトを使ってページ組をするということはできなかったわけです。それをはじめて実現したのがPageMakerです。1985年以来、DTPというのはごく普通のことになって、今や普通の出版社でもパーソナルコンピューターの上で版組を行っているところは多いとおもいます。
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その流れの上でどんどん進んでいくわけですが、ボイジャーさんは、もともとはアメリカの会社で、『Expanded Book』=“拡張された本”というソフトを1992年に発表しています。どう拡張されたかというと、Readingを紙の上からコンピューターの上で読むという“拡張”だった。
その頃、マルチメディアという言葉がはやっていたんですが、実は、ボイジャーさんは“TEXT: The Next Frontier”――文字こそが、次のフロンティアであるということをキャッチフレーズとして掲げました。The Next Frontier というのは、ご存知の方はよく知っている、いわゆる「スタートレック」ですね。そのキャッチフレーズが宇宙こそがNext Frontierであるという風にいっていたわけですが、それをTEXTこそがNext Frontierだといって、電子化をしていったということです。

当時のベストセラー、マイケル・クライトンが書いた『Jurassic Park』という本が、実際に『Expanded Book』になりました。それからこれは日本語版の『Expanded Book』ツールキットです。萩野さんたちが作ったという歴史がありました。  
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さらにこの先どうなっていくのか?電子ブックリーダーみたいな製品が過去にいくつか作られて、失敗したものもありますし、AmazonのKindleみたいに成功しているものもあるのです。
読書専用端末を液晶ではなくて電子インクというもので作ろうという動きがあります。
これは実は、普通の雑誌の表紙を電子インクで作ったらどうなるのか、という試みです。Esquire誌ですね、これ残念ながらEsquireは日本では休刊になってしまったんですが、アメリカではまだ発行が続いています。75周年記念の号の表紙をEインクという電子インクで作ったわけです。表示がどんどん変わっていく表紙というのができたわけですね。インターネット上ではYouTubeとかで見られるんですが、なかなか実物を見る機会がないとおもいますので今日は実物を持ってきました。
今ネオンサインのように映っています。変化しています。ちょっと待つといろいろ変わっていくんです。これがあたかも光っているように見えるんですが液晶のようなバックライトではなくて、実は反射で光っています。紙と同じ反射率を持っているので、紙で読めるような明るさであれば十分光っているように見えるというのが電子インクの一つの特徴なのです。これを実現するのに非常にお金はかかっています。実はこちらにフォードの新型車のコマーシャル、広告が入っています。ネオンサインの町をタイヤ回して疾走しているようなイメージでこの電子インクが使われているわけですね。こういうような試みがアメリカでは積極的に行われているということです。ただ、見てわかるようにまだまだ小さいサイズでも高価です。カラーが出ているように見えますがフィルターでカラーを乗せているだけで白と黒だけなんですね。カラーの電子インクというのもできていますが、なかなかまだ色再現性が悪かったり反応速度がおそかったりするので、これからの課題であろうということになります。技術的にこういうものもできてきている。その内に例えばこのようなディスプレイの上で本をよむのが当たり前になるかもしれないわけですね。
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アップル社にとってMacintoshよりも音楽プレーヤーのiPod、それからiPhoneの方がはるかに多くの台数を販売している図です。
2009年の第2四半期ですが、Macintoshは合計しても200万台ちょっとなのですが、iPodもiPhoneもともに400万台にとどく勢いです。iPodよりiPhoneは1万台多いです。iPodにはiPod touchというiPhoneから電話機能を除いたものも入っておりますので、タッチスクリーンで何かを読んでいたり、コミュニケーションをするというデバイスに関していうと、iPhone単体の台数より多いわけです。
発売から第3世代までちょうど出たわけですけれど、まる2年経ってiPhoneとiPod touch合わせて4000万台以上世界で売られたといわれています。
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コンピューター全体と携帯電話の差をみてみます。2008年の出荷台数は、コンピューターは3億台に満たない、携帯電話は12億台近く、4倍ぐらいの開きが出ているというデータがここにあります。携帯電話はご存知のように、コンピューターを持っていない方でも持っている。ごくシンプルな通話だけの携帯電話を持っている方も入るが、スマートフォンというもっと高機能でコンピューターに近い携帯電話が増えています。
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実は重要なのは台数でなくて、それ以上に、使われ方です。
何故かというと、携帯上でも電子書籍を見ている人も多いでしょうが、紙の書籍にくらべると随分見にくかったりするとおもいます。またどういう風に手に入れるかという方法でも問題が発生するとおもわれます。
モバイルインターネットとは、携帯してインターネットにつなげるデバイスの総称です。任天堂のDSiとか、今度出てくるPSP goとかWi-Fiの無線LANに繋いでコンテンツをダウンロードできるようなもの、それを全部含めたものがこのユニット数全体になります。その全体でスマートフォンの割合は13%です。
ただ、その13%のデバイスがインターネットの利用に関しては3割以上占めているということがあります。何故かというと、無線LANに繋ぐようなデバイスは無線LANがあるところでないと使えませんが、携帯電話がベースになっていると、携帯電話がネットワークにアクセスできますからそれによって当然使い手も増えてくるということがいえます。こういう状態の中でコンテンツがどんどん取れるようになるわけです。どこにいても電子書籍でもゲームにしてもアプリケーションにしても取れるということになります。
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スマートフォン全体に対してiPhoneがどれぐらいのシェアを持っているかというと、8%ぐらいなんです。1%は、Googleから出ている、携帯電話のシステムとして有名なアンドロイドというのですが、それを併せても実は1割に満たないのです。これらマシンからの、インターネットの利用率がどうなっているか?たとえばiPhoneでインターネットにある情報をやりとりするというウェブリクエスト……インターネットのウェブサイトを見るのではなく、ウェブに対してリクエストを出すということ、これが43%ぐらい占めている。それからHTML利用率というのは、普通ウェブページを見る、ウェブサイトを見るということ、これが65%ということで、3分の2以上占めている。これだけのことがたった8%のデバイスから行われているという。
この8%はどんどん増えているわけですが、どういうことになるか、次の図を見るとよくわかります。
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これは世界中のスマートフォンと呼ばれているOS別のリストです。実際のシェアで一番は、シンビアンというOSを使っているノキアです。RIMというのはブラックベリー、NTTドコモさんも端末を出しているものです。あとご存知の、ウィンドウズモバイル。ウィンドウズをベースにした携帯モバイルというものがあります。例えばウィンドウズモバイルは12年間ぐらい市場にあるのですが、実際のシェアは12%ぐらいです。それに対し2年間でiPhoneは8%ですから、追い上げられているというのがおわかりでしょう。
シンビアンは、過半数を握っていますが、注目していただきたいのはインターネットをどう使っているかということです。シェアがこれだけありながら、インターネットの利用率はシェアに比べると低いということがわかります。昔から普及しているスマートフォンは、すべてそうなのです。ところが、iPhoneとかアンドロイドという新しい世代のデバイスは、シェアはまだ少ないですが、インターネットのアクセスが非常に高いということになります。Palmも新型機を出してきましたから、もうちょっと変化するとおもいます。
iPhone/アンドロイドが何故インターネットのアクセスが強いかというのは、インターネットにアクセスしやすいからみんな普通に使ってしまうわけなんです。そのような土壌があって、そこにアプリケーションなどを配信するというシステムをつくりあげたことが非常に強みになっています。

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iPhoneはつい先頃、1億ダウンロード達成とか、5万本アプリケーションがあるという発表などがありました。それを受けて、Yahoo!のアメリカの本社は、いろいろなモバイル機器に対してアプリケーションを提供しているのですが、新規に開発するものはiPhoneだけに限るという発表をしました。つまり、iPhoneのリソースに集中させていかないと、他の会社がいろいろアプリケーションを出してきたときに対抗しづらいということだとおもいます。Yahoo!はいち早く、自分たちはiPhoneに特化するのだという方針を打ち出したわけです。

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先ほどから話が出ているKindleという装置ですが、AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス(Jefrey Bezos)と一緒に写っています。アメリカの場合は、電子書籍にはKindleが普及してきているのですが、iPhoneがそれに対しどう対抗していくか?ちなみに、Kindleというものは、これの意味をご存知の方はあまりいないでしょう。Kindleというのは、人の心に灯をともすとか、感動させるとかそういうような意味合いを持つ言葉なのです。
本というものはそこに書かれている文章によって人の心を感動させていくものだから、AmazonはこのデバイスにもKindleという名前をつけたのだとおもいます。そういう、かなり思い入れのある名前ではあるわけですね。
少し前に、海外の話で、盲目の物乞いが自分のお金をもらう容器の横に「私は盲目です。目が見えません」と書いてあった。そこに通りかかった詩人が、全然そこにお金が入っていないのを見て、これを書き換えるというエピソードがありました。どう書き換えたかというと、「春が来たようですが、私には見えません。」と。まさに事実を客観的に書くか、あるいは詩的に表現するかの違いだとおもうのですが、本の力というのはそういうところがあるでしょう。だからAmazonは本を読むためのデバイスにKindleという名前をつけたのだとおもいます。

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さて、iPhoneの場合は逆に「これは電話ですよ」といっていますが、様々なアプリケーションによって機能を変えていくわけです。そういう違いがまずある。KindleはWi-Fiのあるところで使えるんですが、iPhoneの場合は、携帯電話のネットワークがあればどこでも使えてしまうというところがあります。
何が大きいかというと、アップルの場合は自分たちで審査を行いますから、昨年まで、本を配布するにはアプリケーションの形で作って、しかも審査を受けなくてはいけなかったわけです。Amazonはそれを嫌ってKindleのリーダーみたいな、ビュワーみたいなものを作って、Kindleで購入したものをiPhoneでも読めるようにしてしまったわけです。
ただ、出版社がこれを使ってAmazonの力を利用してKindleやiPhoneへ配信するためには、売上の7割をAmazonが取るというシステムになっています。これは出版社の方でしたら、そんなに取るのかと驚くかとおもうのですが、まさに、こういうデバイスを持った強みですね、そういう強気の商売をしているわけです。
iPhoneの場合は売上の3割を取ることになっていますが、実際には3割というのはネットワークにデータを置いてホスティングをしてインターネットを使う使用料に相当するでしょう。アップルとしては無償のアプリケーションからお金は取れないので、無償のアプリケーションが増えてどんどんダウンロードされるとアップルにとってお金が出ていくばかりです。
最近、有償のダウンロード作品で、釣りのゲームが100万ダウンロード達成したというニュースがあります。
そのソフトはアメリカだと5ドル、日本だと600円、それが何と100万ダウンロード達成したということで、計算していただければどのくらい利益になったか、3割取られたとしてもかなりの利益になったことがわかるとおもいます。ただ残念なことに、その会社は捕鯨に反対していまして、日本語の説明にも売り上げの1部をシーシェパードに寄付すると書いてあったものですから非常にコメント欄でも叩かれていまして、知れわたってしまったために日本であまり売れていないという事実があります。アメリカでは相変わらず販売が好調だと聞いております。

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さて、これは去年僕自身が、そちらの方にあります新書2冊を作りまして、すぐに電子書籍にしましょう、しかもiPhone上で読めるようにしましょう、というふうにいわれて、そうですね、それいいですね、とやったんです。けれども、これがアップル社の商品とか、スティーブ・ジョブスCEO、幹部のことについて触れた本だということで、アップルは一切扱わないという線引きをされてしまったんです。これが(App Storeオープンの)最初の方で出して審査にいきましたから、これが線引きの原因になったおそらく一番最初の例ではないかということが十分考えられるんですが、幻の作品となりました。
実際には動くサンプルがありますので、ちょっとここで幻のバージョンをお見せしたいとおもいます。これは非常に良くできていまして、立ち上げるとボイジャーさんのT-Timeというシステムが動きまして、その上で、まさに普通の新書を読んでいくように、拡大縮小も自由、目次の代わりに項目がサムネイルで表示されます。
今ちょうど動画を見てわかったとおもいますが、iPhoneを使われている方はご存知なのですが、この画面が指に張り付いたように動くのですね。指で方向を示してあとから画面がついてくるのではなくて。まさに指とページが1対1で対応する……指にそのページが張り付いたように動くというところが非常に重要だとおもいます。
電子書籍というのは、単に電子的にテキストが表示されればいいというのではなくて、紙の感覚といいますか、ページをめくるときにペラペラめくっていく、そういう感覚まで再現できないと、本当に書籍を置き換えていくというデバイスにはならないでしょう。それがiPhoneの上ではかなり現実のものになっているといっていいとおもいます。

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ただ残念なことに、先ほどはその審査がありましたので、出版できない、幻に終わってしまったわけです。ところが、それがきっかけになって新しい発想が生まれるわけです。それが、ボイジャーさんの「理想Viewer」といわれるものです。
ちょうど私が今買って、ダウンロードした状態ですね。書籍の本棚みたいになっていて、ここから読んでいくのです。理想書店というボタンがありまして、これをタップすると理想書店のサイトに飛んでそこからダウンロードして、本棚にたくわえていく、ということができるようになります。実際に、出版できなかった僕の本のようなものも、この中から読むことができるようになるわけです。
購入の流れを動画で見てみたいとおもいます。これはあえて、マンガの1話が落ちるのはどれくらいかお見せするためにリアルタイムで流しています。携帯電話回線で、今こういう感じでちょっと待てば、自分のところにコンテンツが落ちてくるような感じですね。

実際のマンガの本というものは、コマの流れというものはあっても、自由に見ているものですよね。ですから逆に、全体が表示されていて、自分の好きなところを拡大し、自分の好きなように動かして読むというのは非常に自然なやり方だと思います。
僕自身もモンキーパンチ先生とか実際のマンガ家さんとお話しすることがあるのですが、その際に、このコマ割りの枠ですね。これが非常に重要で、例えば時々斜めに切られていたりします、そうすると、携帯とかスマートフォンの画面は四角ですから、合わなくなってくるんですね。その際に、枠を消してしまって絵だけを表示する、そういうビュワーもありますが、マンガ家さんに言わせるとコマ割りというのは非常に綿密に行われていて、あれが重要だから、絶対それは表示させていいのだと。
隣のコマが見えていても全然平気であると、いうことをモンキーパンチ先生はおっしゃっているのですね。ですからなるべく普通の形でページが表示されて、それを拡大・縮小しながら読んでいくというのは実際に作られた作家さんの想いにも等しくなっている、ということがいえるとおもいます。

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こういった電子出版ですが、iPhoneの場合、例えばGPS機能があるわけです。今はまだ実現していませんが今後、電子出版がGPSのついているiPhoneのようなものと融合していくと、どういうことが起こるでしょう。
例えば旅行しているときに、熊本の玉名市というところを歩いていたら、急にiPhoneが、ここで読める本があるよというわけです。おそらく、みなさんもこの地名を見て、ここでどういう小説があったかご存知ないですよね。実は夏目漱石の「草枕」がここを舞台にしているのですね。夏目漱石がここである温泉に向かう道すがら、峠を二つぐらい越えていったことがあるのですが、その峠を上がりながら――

山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

――「草枕」の冒頭の名文、まさにこのときのことなんですね。
この冒頭を読んでも、この道だということはなかなか思い浮かばないし、この道を通っても、「草枕」とこの道の関係はわからないとおもいます。
GPSと電子出版が融合した場合、そういうデータがこちらのデータに埋め込まれていると、実はここで書かれた小説がありますよ、読みますか?と、それでその場で携帯電話の回線を通じてダウンロードすることができたりするわけです。この土地を訪れたということが、ある小説と結びついて、より感銘深いものになっていくということがいえるとおもいます。
ちなみに夏目漱石の著作権はもう切れていますので、これは今理想書店から買うのではなくて、著作権フリーのデータとして読めるようなものになっています。

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次に別のアイディアです。
旅行に出かけていって、ある場所を通ったときに、ガイドブックがありますよと表示されます。この場合には、小説ではなくガイドブックです。インターネットの場合、近くに何があるかとウェブサイトを使いますが、書籍のメリットというのはやっぱりある視点に基づいてわかりやすく編集されていることでしょう。ですから、ここに来てインターネットにアクセスして探すのもiPhoneの使い方の一つでしょうが、実際にはそのときにまとまったガイドブックがダウンロードできますよ、といわれた場合に、じゃそれをダウンロードしてみようかな、そんな新しいビジネスチャンスにも繋がっていくんじゃないでしょうか。
これは実際にある、iPhone上のガイドブック、ロンドンのガイドブックです。今、これは繋がっていないんですが、ブックビュワーの方で、そういう機能をサポートすれば、私が申し上げたことが可能になります。

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もう1つ別のアイディアです。これは「坊ちゃん」の一部です。「坊ちゃん」を読んでいるといろいろな地名が出てきます。例えば、これがターナーという画家の風景画に似ているから四国の松山の沖に浮かんでいる島を見て、これを赤シャツが“ターナー島”と名付けようじゃないかと無茶なことをいうわけですよ。
“ターナー島”というのは何だろう、当然、“ターナー島”というのは日本の地名として無いわけですからわからないのですが、電子出版の書籍の方にはちゃんとタグが埋め込まれている。
するとこの地図でですね、実は“ターナー島”というのは無くて四十島……しじゅうじまと読むのでしょうか、岩礁に近いこの小さな岩の島が彼らが見た島なんですね。で、それを“ターナー島”と名付けたと。あまりに「坊ちゃん」が有名になったので、現地ではこれをある種“ターナー島”と呼ぶ場合もあるそうなんです。今、松山にいて、この本を読んでいて、“ターナー島”ってどこだろう?と思ったときに、今度逆に電子書籍の方からマップの方に情報を送ってそこまでの道案内をしてもらう。そうすると例えば10.2kmで24分自動車で走ればいけますよ、というふうになる。また書籍がその新しい楽しみ方が出てくるとおもいます。
単なる電子ブックリーダーでなく、iPhoneのようなものに電子出版が結びついたときには、今までにない融合みたいなことが起こっていくということが考えられます。これは、ぜひボイジャーさんに、実現してもらいたいとおもって今回こういう話をしているわけです。

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これからですが、iPhone及びその派生機種、ここがちょっと曲者ですが、それが出版やコミュニケーションのためのコンピューターとして進化していくという道筋は、今データとかでお見せしたように、かなり明らかでないかとおもいます。
iPhoneは、同じコンピューターでもコミュニケーション中心のコンピューターで、iPhoneの上で1冊の本をレイアウトしてということにはなっていかないとおもうのです。そのためにはやはりMacintoshとか、Windowsマシンとか普通のいわゆるノートコンピューター以上のデスクトップのコンピューターとか、そういうものが、クリエイションやプロダクティビティとかのためには残っていくでしょう。ただ、普通の人が持って歩いて、いろいろな情報を見たり書籍を読んだりするデバイスとしてはiPhoneのようなものが普通になっていくでしょう。

そこにもう1つ割り込んでくるのが、今ちょっとうわさになっているアップル流のネットブックというものです。今ネットブックというのが流行っていますが、小型のノートパソコンですね。ただ、アップルが考えているのは、おそらく小型のノートコンピューターではなくて、大型のiPhoneというものじゃないかといわれています。iPhoneが使っているOSをコンピューター的なものに応用するわけです。これもうわさの域を出ていませんが、アップルは否定していますが……開発は絶対しているとおもいます。それを見た人という談話みたいなのがインターネットに出てくるわけです。そうすると、なぜこの手をおもいつかなかったのかといわれるような、今までにない作り方をしているというのですね。何でそれを自分が思いつかなかったのかという設計、あるいはシステムになっているといわれています。
これがどういうものなのか、出てこないとわかりませんが、だいたいアップルが否定しているときは必ずやっているというのが過去の例ですね。

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更にここでお見せしたいものがあります。先ほど拡大縮小がiPhoneの画面で簡単にいくというのがわかりましたが、それでもこういう小さいデバイスを持つのがいやだという方もいるでしょう。
その場合に、例えば今ここにポケットプロジェクターというものがあります。このサイズでプロジェクターになっているんです。これをiPhoneに繋ぎましてiPhoneから、僕の本の一節を投影する……ページをめくっていくと、今ここに表示されているものと同じものが出てくるわけです。部屋が暗ければもっと大きくしても大丈夫ですが、こんな感じで拡大して表示をしていくことができます。こういうものが、今は別々になっていますが、将来的にこの中に入ってくる可能性というのもあるんですね。自分で何かを読むときには画面上で見る。それで大勢で楽しむときには壁に表示して見るようなことも、技術的には可能になってきているということです。
ずっと話してきましたが、iPhoneというのが今まで、携帯電話であり、インターネットデバイスであり、アプリケーション、ゲームのマシンであるというふうにとられている方もいるんですが、それらの全てを包括した上で更に、iPhoneという電子書籍になっていくという流れがもう見えてきているといっていいとおもいます。
それを支えるのがやはり、ボイジャーさんの「理想Viewer」=理想BookViewerじゃないかと期待しているということなんです。
ご清聴ありがとうございました。

2009.7.10 東京国際ブックフェア・ボイジャーブースにて




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